MMORPG『エリシアオンライン』アーカイブサイト開発記

ガラケー時代の本格3DMMO『エリシアオンライン』のデータベース&アーカイブサイトを個人開発する記録と、まったりプレイ日記。

エリシアオンライン外伝-煌灯ノ輪-

第一章:たまたま出会った5人(結成編)

その日、港町マールケンへと続く街道の片隅にある宿場町は、激しい土砂降りに見舞われていた。 湿った木材と安酒の匂いが立ち込める『宿り木亭』の店内は、天候のせいで足止めを食らった旅人や、冴えない顔をした冒険者たちでごった返している。

カラン、と寂しげな音を立てて、店の最奥にある薄暗い丸テーブルに、木製のジョッキが一つ置かれた。

「はぁ……。まさか、初めて受けた『街道のウルフ討伐』で、逆に追い回されて荷物まで失っちゃうなんて……」

泥にまみれた白いローブの裾を気にしながら、がっくりと肩を落としたのは、プリーストの少女、nonoだった。手元にあるのは、神殿から支給されたばかりの、使い古された木製の聖杖が一本だけ。治癒と強化の神聖術を修めたものの、実戦では仲間の前衛とはぐれ、命からがら逃げ延びるのが精一杯だったのだ。

「気にするなよ、聖職者(プリースト)の嬢ちゃん。俺なんてさ、ソロで角ウサギの群れに挑んだら、一斉に突撃されて自慢の短剣を一本へし折られたぜ? ほら、このザマだ」

対面に座る、軽装の戦士――じっぱーが、刃の半ばから無残に折れた短剣をテーブルに放り出し、自嘲気味に笑った。お調子者らしく軽い口調を崩さないが、その鋭い眼光には、自分の無力さへの悔しさが滲み出ている。

「笑い事じゃないわよ、じっぱー。私は魔法学校を首席クラスで出たっていうのに……詠唱中にゴブリンに石を投げられるし、集中が切れて暴発よ。思い出すだけで頭にくるわ!」

じっぱーの隣で、濡れた金髪を乱暴に払いながら、真っ赤な魔術師ローブを着た少女――ないとが、ギリ、と奥歯を鳴らした。攻撃魔法の威力には自信があるようだが、実戦の泥臭さと不条理さに、プライドをズタズタにされたらしい。

「ないと、落ち着いて……。私だって、せっかく唱えた鈍足化(スロウ)の魔法が、対象の魔獣じゃなくて、目の前を横切った野良犬に当たっちゃったんだから……」

ないとの袖を引っ張りながら、おっとりとした声で慰めるのは、同じく魔術師のるりだった。大きな魔導書を大切そうに抱え込んでいるが、そのおっとりした性格が災いして、実戦の目まぐるしいテンポに完全に取り残されてしまったようだ。

女子3人と男子1人がそれぞれの「手痛い初陣」を嘆き合い、重苦しい沈黙がテーブルを支配しかけた、その時。

ドスン、と地響きのような音がして、テーブルの空いた一席に、身の丈ほどもある巨大な鉄製のカイトシールドが立てかけられた。

「あ、あの……! もしみんなが、まだ固定のパーティーを組んでいないなら……私と、一緒に戦ってくれませんか……っ!?」

大盾の陰から恐る恐る顔を出したのは、小柄な少女――えるだった。体に見合わない重装甲の鎧に身を包み、大盾を必死に抱えている。その瞳は涙目で、今にも泣き出しそうだ。

「私、タンク(盾役)として前線に立ったんですけど……後ろに誰もいないと思うと、怖くて、怖くて……っ! 『後ろにアタッカーがいない盾役なんて、ただの動く的だ』って、さっきのパーティーをクビにされちゃったんです……。でも、でもっ、盾役がいないと、みんな攻撃されちゃうから……!」

怯えながらも、誰かを守りたいという強い意志だけは捨てていない。その不器用な叫びが、テーブルの4人の胸に突き刺さった。

じっぱーが折れた短剣を拾い上げ、ニヤリと笑う。 「へえ……。女の子にそこまで言わせといて、黙ってられるかよ。後ろを任せられる盾役、悪くないな。俺は背後を気にせず、思いっきり突っ込みたいタイプなんだわ」

「ふん、あんたが前を張ってくれるなら、私が詠唱中に石を投げられることもなさそうね」ないとが腕を組み、不機嫌そうに、けれど嬉しそうに口元を緩めた。

「うん……えるの後ろからなら、私も落ち着いて敵を見定められる気がする」るりが静かに微笑み、魔導書を開く。

全員の視線が、最後にnonoへと集まった。 nonoは自分の頼りない聖杖を見つめ、それから、傷だらけになりながらも仲間を求めている4人の顔を真っ直ぐに見返した。

「私のスキルは、まだ未熟な『ブレッシング(祝福)』です。攻撃もできないし、大した回復もできないかもしれない……。でも、えるさんがみんなを守るなら、私はそのえるさんの盾を、じっぱーさんの剣を、ないとさんとるりさんの魔法を、全力で支えます! 私に、みんなの力を引き出させてください!」

その言葉に、全員が力強く頷いた。

「よし、決まりだ! たまたまこのクソ泥沼の酒場で会ったのも、何かの縁だろ。紅一点ならぬ、黒一点だけど……俺たちのパーティー、結成だな!」

じっぱーがジョッキを掲げ、5人は初めての、そして運命の乾杯を交わした。全員がまだ、冒険者になりたての雛鳥。しかし、この偶然の出会いが、後に世界を揺るがす大至急の戦いへと繋がっていくことを、今の彼らはまだ知る由もなかった。

街道の外では、激しい雨の向こうで、何かが不穏に蠢くような、獣の咆哮が響いていた――。

本作品はエリシアオンラインの世界観をもとにした非公式ファンフィクションです。 原作とは異なる独自解釈・創作要素を含みます。

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